2024年06月01日

筋を通すことは 簡単なようで 実は難しい

 筋を通す。いつも私が心がけていることです。しかしながら、筋を通したとしても、その決断、判断に全員が賛同してくれているかというと、そうでないこともあると思います。
 例えば今、東名鍛工は6号機をオーバーホールに出していますが、打ち合わせの際、オーバーホールをお願いしる業者の会長さんより「今回分解して不具合がみつかったときはどうしますか?単に問題となっている部分だけの修理にしておきますか?それとも、せっかくの機会なので、ほかにも悪いところが見つかれば一緒に修理をしてしまいますか?」と質問されました。
 ベストなのは一気に修理してしまう方がいいでしょう。しかしながら、お客様にいつまでもご迷惑をおかけするわけにはいきませんので、私は「不具合箇所が見つかっても、修理せず、そのまま組付けてください」とお願いしました。手術でお腹を開口したのに、ほかに悪いところがみつかっても「何もせず元に戻してください」とお願いしたわけです。

 業者の会長さんからは「こいつあかんな」と思われたかもしれませんが、上記、見方によればどちらも筋を通しています。お客様目線に立てば納期優先、設備目線に立てば納期より設備保全優先となります。
 筋を通すのは簡単なようで実は難しい、と感じることがよくあります。今回の決断を「お客様納期もあることだし、いつまでも止めてはいられない。社長の判断は正しい」という社員もいれば、「なぜせっかくの機会なのに、修理せずにほっておくのか。また壊れたらどうするのか」という社員もいるでしょう。どちらも正しい答えです。大事なのはバランス。そのときそのときで状況も異なります。だから、そのバランスにより下す決断も変わります。以前と違う決断をすることもあります。

 私は大したことない人間ですが、今、東名鍛工の社長を任されています。「経営とは社長の思い、夢を社員を通じて実現すること」と教えられてきましたが、私はこのフレーズが嫌いでした。なぜなら、会社は社長ひとりのものではなく、社員全員のものでもあるからです。ゆえに書くならば、社長の思いではなく「全社員の思い、夢」と書くべきと感じていたからです。
 しかしながら「決断」は全社員が下せるわけではありません。決断には大小さまざまありますが、どんな小さな案件でも最後は「社長決めてください」となることがほとんどです。ならば、社長が下した決断については、異論があったとしても、全社員がついてきてもらわねばなりません。自分なりに皆の思いを受け止めた上での決断だからです。
 「社長職に畏怖の念を抱こう」、社長就任時に友人から贈ってもらった言葉です。社長は人事、経営、設備、お金などありとあらゆることにパワーを持っています。そのパワーは強大です。だからこそ、社長職に敬意を払いつつ、日々、人として正しい判断ができるよう精進していきたいと思います。今月もよろしくお願いします。

東名鍛工株式会社 代表取締役社長 宮嶋俊介

デスク横にはってある友人からの手紙