会社にとって大事な3要素は「人」と「設備」と「お客様」と言いますが、その筆頭はなんといっても「人」です。「人」なくして設備も活かせませんし、お客様応対もすることはできません。「人」をいかに育てるかで会社の命運が決まります。そこまでは皆わかっているのですが、「人」を育てるのは皆さんけっこう苦手ではないでしょうか。
なぜ苦手なのか?私なりに思うには、「人」を育てるには「愛情」はもちろん大事ですが、実はそれ以上に教える側に「忍耐」が必要だからと思っています。自分ではわかっていても相手は同じように理解はしていませんし、期待通りには動いてくれません。どんなに優秀な人でも最初は何もわかっていません。教える側はとてもイライラします。だから「苦手なんだろな」と。
でも相手が自分の思うように出来ないからといって、声を荒げたり、けなしたりしてはいけません。専門用語もNGです。厳しさと荒々しさを一緒にしてはいけません。
厳しい言葉であっても、そこに敬意(リスペクト)があればまだ人は振り向いてくれますが、敬意を失った言葉はただの言葉の暴力になってしまいます。とにかく「忍」の一文字です。自分は相手の欠点ばかりでなく、長所(よいところ)を認めてあげているか? 相手を自分の家族のように愛してあげられているか? 相手を好きになろうと努力しているか? 自分が相手を好きにならずして、相手が自分を好きになるはずがありません。
私は性悪説ではなく性善説派ですので、どんな人であれ「がんばろう」と会社の役に立とうという気持ちを必ず持ってくれていると信じています。だから、「やる気」をそぐような言動は控え、とにかくアゲアゲ、いいところを見つけるよう心掛けています。
相手は一人の人間です。自分の価値観を押し付けず、気持ちよく経験を積ませることが大事と思っています。そういう「陽」のスパイラルの師弟関係は、教える側、教えられる側にとってもかけがいのない経験となり、多少の壁が立ちはだかろうと簡単に乗り越えてくれる人材へと成長してくれると思っています。
東名鍛工株式会社 代表取締役社長 宮嶋俊介