やかんの水に火をつけてもすぐに変化はありませんが、ずっと火をつけていると、水が沸騰し始めて蒸気という気体に変わります。どんなに弱火であっても、火さえ消さなければ、水は必ず蒸気に変わります。
やかんであれ、ポットであれ、電子レンジであれ、冷たい水を一瞬で沸騰させることはできません。どんな手段をつかっても、ある程度の時間はかかるということです。
人生思い通りにいかないことだらけですが、沸点へ到達するまでめげずに、ひとつのことを懸命にやり続けていると、今まで見えなかったものが突然見えてくることがあります。
私にとってアメフトはまさにそれでした。毎日が嫌で仕方ありませんでしたが、ある時から楽しさに変わりました。社長業も最近は楽しくなってきました。
まさに、論語の一節にある「知・好・楽」です。「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」という論語の教えを一言で表したものが、「知・好・楽」。
これを仕事に例えると、「その仕事を知っているだけの人は、仕事を好きな人にはかなわない。さらにその仕事を好きなだけの人は、仕事を楽しんでいる人にはかなわない」ということになります。
極めてシンプルな人生の真理です。仕事でも趣味でも人生でも、それを楽しむ境地に至って初めて本物ですよ、ということですかね。
こんなクソ暑い鍛造という仕事ですが、鍛造はおもしろい、筋トレも出来てダイエットもできてなんて素敵な仕事なんだ、という変態的な思考に変えてみる。そうすると、あれだけしんどいと思っていた仕事が好きになり、楽しみに変わり、その姿はいつしか自らが望まなくとも皆から頼りにされる存在へと成長していきます。
と言いつつも、よっぽどの変態でない限り仕事が楽しい人はいないと思います。大事なのはメリハリです。リフレッシュするときは仕事を忘れリフレッシュする。それが仕事を楽しくできる秘訣であると思っています。
東名鍛工(株) 代表取締役社長 宮嶋俊介